
こんにちは。Re・maisonの梅田です。近ごろ「この物件、売主って書いてあるから直接買えば仲介手数料がかからないんじゃないの?」というお問い合わせを多くいただいています。
確かに、物件の売主が不動産会社であれば、買主側が仲介業者を通さずに契約できる可能性はあります。その結果、仲介手数料を節約できるという話もよく聞きます。
しかし、現実の不動産取引はそう単純ではありません。業界の構造や売主側の事情、そして買主にとってのリスクなど、事前に知っておくべき情報がたくさんあります。
そこで今回は、「売主物件を直接購入する」という選択肢について、現場の実情を踏まえながら解説していきます。
1.「仲介手数料がゼロになる」って本当?
不動産を購入する際、仲介会社を介さずに売主(不動産会社)から直接買えれば「仲介手数料がかからずに済む」というメリットがあります。
たとえば、3,000万円の物件を購入する場合、仲介手数料は約105万円(税込)にもなります。
これがまるまる浮くと考えると、直買いはとてもお得に思えますし、実際それを狙う買主様も一定数います。
しかし、この「売主から直接買う=絶対的に得」という考え方には、注意すべきポイントがいくつもあります。実際の現場では、“安く買うことができたが、結果的に失敗だった”という事例も存在します。
その背景には、不動産業界特有の事情や、消費者から見えにくい構造が関係しています。
2.売主不動産会社の事情と「直販しない」現実
まず、すべての不動産会社が「売主として自社の物件を直接販売しているわけではない」という事実があります。
売主不動産会社の大半は、主に買取再販の会社です。一番大事なことは、不動産を仕入れする事です。
仕入しなければ商品がなく、始まらないからです。仕入れ先は不動産の仲介会社からの情報などで、BtoBのビジネスモデルです。
では、そこから自社で販売となると、ビジネスモデルとしてBtoCに変わります。toCとtoBでは営業手法が全然ちがいます。
いちからC向けの営業モデルを作り上げるには、そうとうな時間と労力がかかります。であれば、仲介手数料を払ってでも、仲介会社に一任してやらせた方が楽だというのが現場の声です。
たとえ売主が不動産会社だったとしても、販売の窓口はすべて外部の仲介業者に任せているケースが多く見受けられます。これは、社内の営業リソース不足や、取引先の仲介会社との付き合い、ネットワークの維持など、会社の運営方針や営業戦略に基づくものです。 そのため、買主が「この会社が売主だから、直接問い合わせれば仲介手数料がかからないはずだ」と思って連絡をしても、実際には「仲介業者経由でお願いします」と案内されるケースもあります。
買主側から見ると納得しづらいことですが、これは業界内ではごく一般的な構造です。
3.「直販している」物件の落とし穴
売主が直接販売している場合であっても、注意すべきは“その情報が誰にとって開かれているのか”という点です。
たとえば、ある不動産会社が自社サイトでのみ直販売をしていて、ポータルサイトなどでは一切その情報を出していない場合、それを知っているのはその会社のリピーターや、偶然その情報にアクセスした一部の人だけです。
つまり「直販はしているが、一般的には知られていない」というケースも多く存在します。
また、運良く売主から直接購入できる状況にあったとして、それは本当に“買主にとってベストな選択肢”なのでしょうか?
ここにはもう一つ、大事な視点が関わってきます。それは「売主=取引の当事者である」ということです。